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温故知新 Episode-06 改革 Episode-06 改革

独立採算制度の導入

オイルショックによる不況の嵐に直面し、経営陣は企業としての方向性を大幅に転換すべく

 「トップ企業、一流企業の合理化需要に特化する」

 「既存の技術では満足できない各社各様の合理化・省力化機械を開発する」


という大きな経営判断を下します。しかし、それは非常に難易度の高い機械を開発すること、すなわち、お客様が抱えるあらゆる難題を必ず克服する、という命題を同時に抱えることになったのです。しかも、汎用機の大量受注といった薄利多売ではなく、多品種、高付加価値を兼ね備えた機械開発(=品質)を維持しつつ、同時に確実に収益をあげる仕組を構築する必然性に迫られます。昭和54年、京都製作所は、この企業方針の転換を機に、大掛かりな社内改革をスタートさせます。その内容は、当時としては非常に先進的なものでした。

●経理の公開=ガラス張り経営の実施

経営陣は、社長以下役員全員の給与、交際費などを含め、会社の収支のすべてを公開。これにより、今、会社がどのような立場に置かれているのかを、全社員が確実に把握できるようにしたのです。

●部門別独立採算制度(独算制)の導入

技術、営業を問わず全社員の意識を根底から変革させ、「利益を出す」という原理原則に集中させる手法として、当時としては画期的な「部門別独立採算制度(独算制)」を本格的に導入します。言わずもながら、この制度は、各部門を独立した会社に見立て、独立採算で利益を確保し、事前に各部門が設定した経営計画と比較して、その貢献度を評価基準とする仕組のこと。今では、大小問わず様々な企業が、形式や名称が変われどこのシステムを積極的に導入していますが、京都製作所は、いわばその走りだった訳です。このシステムが、当時の社員にとって、非常に過酷なものであったことは想像に難くありません。同業他社があえて避けてきた問題を克服するための新技術を開発し、同時に時間・コストの抑制、利益貢献を目標通り達成するという、ある意味で相反する課題…しかし、社員達はあえてこの仕組を享受し、技術者の理屈、サラリーマンの理屈をこえて奮闘します。

●利益の還元

俗に言うインセンティブ(動機付け)。利益を上げれば、その分の見返りを様々な形で還元していく、当たり前のようでいて、意外になおざりにされてきた仕組を、給与・賞与はもとより、海外旅行や社員寮といった福利厚生、ストックオプションといった各種制度に具体的に反映させていきます。

当初、この社内改革はかなりの難航が予想されました。しかし、いざふたを開けてみると、この抜本改革は素晴らしい成果を上げ、3年目にして機械を開発すれば必ず利益が出る体質に変わっていきました。

これは、多品種・高付加価値開発、ガラス張り経営、部門別独立採算の発想、インセンティブ等々、現在当たり前のように行なわれている形態をいち早く導入した先進性、そして何よりも、様々な矛盾を抱えながら、オイルショックという危機に対し、何とか乗り越えていこうという全社員の強い意志がもたらした、最良の結果といえるかもしれません。


テトラパックとの出会い
テトラパックイメージ
「テトラパック」この言葉を聞いて小学校の給食を思い出される方は、中高年の皆さんのはずです。レトロブームで、コンビニ等でも時折見かけるようになった、三角形四面体の液体紙容器「テトラパック」。この画期的な包装技術を開発したテトラパック社は、スゥェーデンに本社を置く大手企業で、現在、その発展系として「テトラブリック」という文字どおりレンガ状の形の液体紙容器を市場に送り出します(スーパー等で所狭しと陳列されている紙パック飲料は、全てテトラパック社の技術によるものなのです)。

これは先の四面体に比べ物流効率が圧倒的に優れ、しかも、アセプティツク(=無菌充填)を可能とし、牛乳をはじめあらゆる飲料が常温で長期間保存でさるという、画期的な特徴を持った液体紙容器の充填システム。昭和40年代後半、欧州ではこの充填システムの出現により、牛乳をはじめあらゆる飲料の常温流通が可能となり、まさに物流システムの大革命がはじまっていました。

京都製作所では、この画期的なシステムに早くから着目していました。「テトラパック社のアセプティックブリックは必ず日本中の飲料業界を席巻し、その時、京都製作所のような会社が必要となるはずである」昭和47年、経営陣は密かに同社とコンタクトを取り、様々な提案を試みます。しかし、そこにはまたしても大きな壁が待ち構えていました。


完璧なシステム

テトラパック杜の営業戦略は、このブリックシステムを単体で販売するのではなく、容器の材料である紙と、その生産手段である充填機、関連する包装機械までをも含んだトータルパッケージングシステム(機械をリースし、紙を販売するシステム)を顧客に提供する方式をとっていました。すなわち、関連する包装機械については、既にグループ内に専門の開発企業があり、完全に標準化されたシステムを世界中に供給する体制が整っていたのです。しかも、もうひとつの基本方針は、品質管理を徹底するため、すべての機械をスウェーデン本社あるいはその関連企業で集中生産し、現地生産を行なわない方針を固めていました。

技術者達を驚愕させた完璧なシステムを持つ巨人…テトラパック社に隙入る余地はないと思われました。しかし、経営陣には勝算がありました。それは、日本の複雑な流通機構や、そのために派生する多様なユーザーニーズ、性能レベルに適応するためには、関連包装機械をいわゆる「日本仕様」にする必要がある。そのためには技術力のある包装機械メーカーをパートナーに持つ必要となるはずである、という考えでした。まさに、カセットテープケーサーで苦汁を味わった「国民性の壁」を逆転発想したのです。

昭和50年代に入ると、予想どおりブリックシステムは飲料業界各社で採用されはじめ、瞬く間にその主流を占めるようになります。同時に包装機械もそのニーズが高度かつ多様化し、より日本の流通機構・風土に合った「日本仕様」の機械を求められるようになっていきます。京都製作所は、同社に対し、国産化によってこの問題を解決することを提案、日本ユーザー仕様のための様々なアイデアを積極的に提供していきました。その結果、昭和54年、テトラパック社は、国産化による機械製作を許可するに至ったのです。


ヤクルト「ミルミル」の登場

ヤクルトミルミルまた、京都製作所にとってこの年は、ブリックシステム国産化を機とした、二つの大きな転機を迎えることになります。

そのひとつは、ヤクルト「DIBプロジェクト(ヤクルトミルミル開発プロジェクト)」。

100ccという超小型ブリック容器を採用したミルミルに対応した包装機械の開発を、京都製作所が担当することになります。つまり「ミルミル」は、テトラパック社の充填機+京都製作所の包装設備機器、この統合ラインを初めて世に送り出すきっかけとなったのです。


画期的なアイデア「ストローアプリケーター」
ストローアプリケーター
もうひとつの転機、それは「ストローアプリケーター」の開発でした。「ストローアプリケーター」とはブリック容器の背面に、ストローを貼り付ける機械の事。当時の日本市場において、ブリック製品の商品構成は、200ccの小型容器主体であり、飲用時にストローが必需品となっていました。そこで、スウェーデンで開発されたこの機械が、大量に輸入されます。しかし、この機械も「日本仕様化」を求める声が日増しに高くなり、京都製作所は、この「ストローアプリケーター」の改造に着手します。


若手主体の開発チームを編成、「日本仕様化」に対する様々な検討が重ねられ、まったく新しい斬新なアイデアが盛り込まれていきました。その代表的なものがストローの接着方法。ポリエチレンの袋に入ったストローを、表面が同じポリエチレンでコーティングされたブリック容器に、従来の糊ではなく、熱処理で接着しようというものでした。この他、いかにも日本企業に好まれそうなアイデアが随所に施され、新型「ストローアプリケーター」は、昭和54年末に完成をみます。この新型機はテトラパック社の期待に充分に応え、日本市場向けに全面採用されることが正式決定されます。


技術は国境の壁を越えて
契約締結 昭和55年1月、テトラパック社と京都製作所の「共同開発」並びに「製造委託」の正式契約が締結されます。最初の出会いから実に8年。あきらめることなく描き続けた夢が、ついに現実となった瞬間でした。

その後、京都製作所は今日まで、同社の仕事を通じ、品質管理、規格標準化、安全規格、あるいはドキュメンテーションをはじめとした周辺技術など、様々なことを学び、世界各地に数多くの機械を供給してきました。その現場には、国境を越えた、既成概念にとらわれない若い世代の、あくなき技術追求の精神が、脈々と受け継がれています。

「私たちはずいぶん若い時に恋愛をし、結婚を誓い合った。
 しかし、まだ若すぎるという理由で、親兄弟をはじめ親戚の人達の賛成が得られなかった。
 しかし、その後もお互いの愛を温めあい、粘り強く周囲の理解を得ることに努めた。
 そして、めでたく今日ここに周囲の理解と賛同を得て、結婚式を迎えられたわけである。
 どうかみなさん、若い2人に祝福の拍手を!」


 ※正式契約締結時、日本テトラパック社長(当時)のスピーチより抜粋



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